ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

ぷかぷか日記は以下に移転しました。
ぷかぷか日記 – NPO法人ぷかぷか

演劇ワークショップを続ける理由

   演劇ワークショップの助成金をいただいたところから「助成を受けての想い」を書くように要請がありました。

 演劇ワークショップをやるには、講師料とか、会場費とか、大道具や小道具を作ったり、いろいろお金がかかります。お金はかかるのに、収益は生まないので、どこかでお金を調達する必要があります。それで助成金を申請しているのですが、すべての経費をまかなえるわけではありません。なので、赤字が出ます。今まではぷかぷかにその穴埋めをしていただいていましたが、ぷかぷかも資金が潤沢にあるわけではないので、今年はもう自分でその赤字分を穴埋めするしかないなと思っています。

 赤字分を自分で穴埋めしてでも演劇ワークショップをやるのはどうしてなのか。

 いちばんの理由は、ぷかぷかさん達と一緒にやる演劇ワークショップは、とにかく半端なく楽しいからです。演劇ワークショップの場は、日常生活の場より、もう少しお互いが自由になれます。この、みんなが自由になれる、というのが演劇ワークショップの場のいいところです。

 みんなが自由になれるので、私たちとは少し違う、彼らのものの考え方、ひらめき、想像力などが、ふだんの暮らし以上に楽しめます。違いをそのまま作品に生かすことができます。だから今までにないおもしろいものが生まれます。

 

 下の写真、この場面はお祓い棒を掲げているぷかぷかさんが場の雰囲気を一人で作っています。「お許しを!」を謝っているのは地域の人。こんな場面が自然にできてしまうのが演劇ワークショップのおもしろいところ。こんな場面に出くわしてしまうと、もうやみつきになってしまうのです。

 

  こんな楽しさの中で、彼らに対し

 「あなたがこの場に必要」「あなたにここにいて欲しい」

と、素直に思えるようになります。そう思える関係が自然にできます。障がいのある人達を排除することの多いこの社会にあって、そんな風に思える場があることはとても大事です。ここから彼らを排除しない社会が始まります。

 「あなたにいて欲しい」と思える関係の中で作り上げた芝居には、彼らと一緒に過ごすことで生まれる楽しさ、面白さがてんこ盛りです。なので、その芝居を見ると

 「彼らとはいっしょに生きていった方がいいね」

と、理屈抜きに思えます。

 何よりも彼らといっしょに生きると何が生まれるかを、目に見える形で表現します。「ともに生きる社会」を作ろう、というかけ声だけはたくさんありますが、ともに生きると何が生まれるのかまで示しているところはなかなかありません。ともに生きる場、ともに生きる関係を作り切れていないからだと思います。

 演劇ワークショップは舞台の上で、彼らといっしょに生きると何が生まれるのか、その豊かな世界を目に見える形で示します。小さな「ともに生きる社会」が舞台の上で実現しているのです。いや、舞台の上だけではなく、演劇ワークショップの場そのものが「ともに生きる社会」をすでに実現しています。

 

 

 演劇ワークショップに参加するために毎回栃木から新幹線に乗ってやってきた方がいました。その方の感想

「みんなすごく素直で、思ったことをストレートに表現するから、リアルで人間味があってとても魅力的に思えて、私はぷかぷかさんの大ファンになっていました。私にとってそこは自然と笑顔になれる場所で、優しい空間でした。そんな彼女、彼たちと一緒に立った舞台。やり切った感、ハンパなかった。ぷかぷかさんたち一人ひとりとふれあった思い出が頭の中で駆け巡り、みんなで頑張った喜びと終わってしまった寂しさとが複雑にからみあって、舞台が終わってからの反省会、涙がこぼれ落ちてしまいました。」

 涙がこぼれ落ちたどころか、号泣でした。ぷかぷかさんとおつきあいしたことが、号泣するほどの気持ちを生むのです。そんな関係ができてしまうのが演劇ワークショップの場であり、ぷかぷかさん達の魅力です。

 

 栃木から新幹線に乗ってやってきて、舞台に立つ

 

 「障害者はいない方がいい」と暴力的に障害者を排除したやまゆり園事件から6年。障害者のグループホームを建てようとすると反対運動が起こったり、施設での虐待が止まらない社会は、事件と地続きにあります。

 障がいのある人達を排除する社会は、社会の幅が狭くなり、お互いが息苦しくなります。彼らがいることの豊かさが失われ、社会は痩せこけていきます。

 

 そんな社会にあって、私たちに何ができるのか。

 やっぱり、

「障がいのある人たちとはいっしょに生きていった方がいい」

と言い続け、彼らと一緒に生きると社会が豊かになることを表現し続けるしかないのだろうと思います。

 だからこそ、赤字分を自分で穴埋めしてでも、演劇ワークショップは続けていこうと思うのです。