ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

ぷかぷか日記は以下に移転しました。
ぷかぷか日記 – NPO法人ぷかぷか

仕事は面白いもの  仕事は人生を支えるもの

 先日書いた『生産することのむつかしい障がいのある人とどう向き合っていくのか』に福祉事業所で働く当事者「謎解き」さんからまたコメントがつきました。 

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コメント読んでいただきありがとうございます。ですか、私の言いたいのは、ぷかぷかのやり方が間違いとかセノーさんが悪いとかそういうのではなく就労継続Bとしてどうあるべきかということなのです。私は、ぷかぷかの考えが間違いだとは思いませんが就労継続Bと言うのはやっぱり就労を目指す人ための施設だと思います。けしてセノーさんが社会に適用しないとか言っているのは、なく就労継続Bでは、難しいのでは、と言っているのです。確かに今の社会は、何か正しく何か間違いとかは、わからなく曖昧なところがありますが私が本当に悪いのは、セノーさんが前に利用してた作業所だと思います。なぜなら作業所ゆったり仕事したりあまり動けない人を受け入れ施設だと思うのです。私の書いたコメントが不愉快に感じてしまったのでしたら済みませんでした。それから私は、やまゆり園の犯人が言って言っていた事は、本当に許せません。障害者いない方が良いとか言語道断だと思います。言葉は、悪いですが障害者は、いない方が言っている犯人がいない方が良いと思います。誰でも生きる権利は、ありますし、誰にも人の未来を奪う権利は、ありません。あなたの考えは、素晴らしいことだと思います。

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 「謎解き」さん、コメントありがとうございます。

 仕事というものについて私が思っていることを書きます。(以前どこかで書いたものですが、あらためて書きます)

 養護学校の教員をやっていたとき、卒業生が時々訪ねてきました。いろんな話をしに来るのですが、一番多かったのは仕事が辛いという話です。それに対し、

「仕事は辛いもんだよ」

とか、

「お金もらってるんだから、辛さも我慢しなきゃ」

といった答え方をしていました。その頃の私の仕事観をそのまま反映しているような答えでした。

 今思うと、仕事観がすごく貧しかった、と思います。そう思うようになったのは、ぷかぷかを始めてからです。

 ぷかぷかを始めて2年くらいたった頃、ぷかぷかで働いているみーちゃんという方の認定調査がありました。みーちゃんはぷかぷかに来る前は地域作業所で働いていました。のんびりした作業所で、こんなことでいいんだろうかと25歳の時、ぷかぷかに移ってきました。仕事のペースも違い、来た当初はかなりきつかったのではないかと思います。みーちゃんはクッキーを作っていたのですが、仕事を徐々に覚え、材料、道具の準備から、クッキーの製造まですべて自分でできるようになりました。ちょうどその頃に認定調査があったのです。認定調査というのは、障がいがどの程度で、どの程度フォローが必要かを調べる調査です。

 ケースワーカーさんが

「最近、お仕事はどうですか?」

という質問をしました。

「以前は毎日うつむいて仕事をしていましたが、今はまっすぐ前を向いて生きています」

 私はそばで聞いていてびっくりしました。仕事というのはぷかぷかで働くメンバーさんにとっては人生を支えるほどのものであることに、この言葉で初めて気がついたのです。

 仕事は人生を支えるもの、そんな当たり前のことに、メンバーさんの言葉で気づかされたのです。「仕事は辛いもの」では、人生が辛くなります。仕事が楽しいと、みーちゃんのように「まっすぐ前を向いて生きています」という言葉が出てくるのです。

 仕事をやる中で「まっすぐ前を向いて生きています」なんてなかなか言えない言葉です。ふつうのサラリーマンが、一体どれだけこんな気持ちで働いているでしょう。それを考えると、みーちゃんのいった言葉がどれほどすごいものであったかがわかると思います。

 ぷかぷかに見学に来られる多くの方が、

「ここは明るいですね」

と感想を言われます。それはみんなが仕事を楽しんでいるからです。セノーさんも含めて、です。セノーさんも仕事するときはするのです。いつも寝っ転がってるわけではありません。

 いつもいつも笑い声が絶えません。

「え?みんな笑いながら仕事しているの?そんなことでいいの?」

と思われる方もいらっしゃると思いますが、一日の大半を占める仕事を楽しくやってこそ、人生が楽しくなるのだと思います。仕事が楽しいと自然に笑い声が出てきます。

 ぷかぷかは帰りの会で

「いい一日でしたか?」

という質問をします。仕事を通していい一日を作り出すことをぷかぷかは大事にしているからです。いい一日は、仕事を楽しむことで生まれます。

 つまり、ぷかぷかは就労継続支援の事業所として、

 ・仕事は面白いもの

 ・仕事は人生を支えるもの

という二つの大事なことを仕事を通して教えている、というわけです。これは仕事というものの一番大事な部分だと思います。そういうことを身につけた人こそ、将来、一般就労についてもいい仕事ができ、いい人生が送れると思います。(「仕事は辛いもの」とか「仕事は我慢してやるもの」なんて考えている人は、将来、いい仕事なんてできません。)

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 昔担任していた生徒がぷかぷかにやってきたことがあります。一般就労した生徒で、それなりの給料をもらい、貯金も300万くらい貯めたといっていました。理想のコースを歩んでいるといっていいくらいです。でもいろいろ話を聞いてみると、彼は本当に幸せなんだろうかと思いました。

 ふだんは仕事に追いまくられ、たまの休みには打ちっ放しのゴルフにいくそうです。

「楽しい?」

「いや、別に」

なんとも淋しい答えでした。ほかにやることがないから行ってるけど、別に楽しいわけではない、と。

貯金が300万円もあるというので

「何に使ったの?」

「イタリアにサッカーを見に行きました」

イタリアまで行くのに約30万円。

「残りのお金はどうするの?」

「別に考えていません」

なんとなく貯めてるというわけです。

 一般就労することが最大の目標のようにこの業界ではいわれていますが、じゃあ、その中身はどうなのかを見ていくと、こんな感じなのです。もちろんみんながみんなこんな感じではないと思います。一般就労した方で幸せな人生送っている方もたくさんいると思います。でも、給料がいい分、仕事がきついことは確かです。自分を殺さねばやっていけないところもたくさんあると思います。余暇の時間だって、きちんと取れるわけではありません。そんなことを考えていくと、最終目標として漠然と一般就労を目指してがんばる、といったことがなかなか出てこないのです。

 それよりも

「今日という一日、仕事を楽しんで、いい一日を過ごす」

方が、いい人生につながる気がするのです。ぷかぷかはそれを何よりも大事にしています。

 もちろん何かの機会に一般就労に結びつくことがあるかも知れません。それはそれで大歓迎ですが、それを目指して「訓練する」といったことは「ぷかぷか」はやりません。

 かけがえのない、今日という一日を大事にしたいからです。

 

 コメントをよこしてくれた「謎解き」さん、仕事、楽しんでいますか?毎日いい一日を過ごしていますか? 

 機会があればぜひ「ぷかぷか」にあそびに来て下さい。かしこまった見学ではなく、気楽にあそびに来るのがいいと思います。「ぷかぷか」って、そんな感じのところです。

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