ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

ぷかぷか日記は以下に移転しました。
ぷかぷか日記 – NPO法人ぷかぷか

「気色悪い!」が発端で生まれた新しい価値

 ぷかぷかを始める前、入賞すれば650万円もの大金をゲットできる空き店舗活性化事業にエントリーしました。説明会には、その道の強者、といった雰囲気の人がわんさと集まっていて、もう見ただけで気後れしてしまいました。それでもなんとか書類審査に通り、なんとかヒアリングに通り、最終審査のプレゼンテーションまで行きました。

 そのプレゼンで読んだ原稿に「生産性」とはちがう価値を見つけたい、というふうなことを書いていました。

 

 彼らと一緒に働くことは、生産性の面からみると、極めて厳しいものがあります。彼ら抜きで働いた方が、ずっと効率はいいでしょう。でも、効率のみを追い続ける社会はお互いがとてもしんどくなります。世の中に一つくらいは、効率のよさを追わないところがあってもいいのではないでしょうか。

 効率をこえる価値を、彼らと一緒に働くことの中に見つけることができれば、彼らにとっても私たちにとっても、大きな希望になります。彼らと一緒に楽しく働きながらも、パン屋を回していけるだけのお金を稼ぐ、といったことがどこまでできるのか、効率を超える価値は見つけられるのか、ぷかぷかは壮大な実験の場でもあるような気がしています…

 

 こういった思いが審査員に届いたのかどうか、なんだかおもしろいことが始まりそうと期待が集まり、なんと650万円ゲットできたのです。

 ま、それはともかく、ぷかぷかを始める前から、そういった「生産性」とはちがう価値を見つけたいと、なんとなく思っていました。ただ、具体的にどうやってその価値を作っていくか、というところは曖昧でした。彼らと一緒に働く中でなんとなく見つかるんじゃないか、と漠然と思っていました。

 その新しい価値は、全く思いもよらないことがきっかけで、ぷかぷかさん自身が作りだし、お客さんがそれを見つけたのです。

 ぷかぷかを始める前は養護学校の教員をやっていたので、接客というものをどうやってするのか全くわかりませんでした。で、講師をお招きして、ぷかぷかさんとスタッフで、接客の講習会をやりました。

 「接客マニュアル」というのがあって、その通りにやれば、それなりに上手と思われるような接客ができます。マニュアルには「いらっしゃいませ」「お待たせいたしました」「かしこまりました」「少々お待ちください」といった決められた言葉があって、両手を前にそろえて、これを繰り返し練習すると、なんとなく上手な接客ができるような気がしました。

 ところが実際にぷかぷかさんがやってみると、なんだか「気色悪い!」のです。私は彼らに惚れ込んでぷかぷかを始めたのですが、接客マニュアル通り振る舞うと、もう彼らじゃない、というか、無理に自分でないものになろうとしていて、なんか、気色悪かったのです。自分を押し殺し、接客マニュアルにあわせようとする彼らの姿は、ただただ痛々しくて気色悪かったのです。 

 この先、毎日気色悪い思いをするなんて、考えただけでぞっとしたので、講師の先生は一日でお断りし、もう自分たちで考えてやることにしました。お客さんに不愉快な思いをさせない、ということだけ守ってもらって、あとは自分で考えてもらうことにしたのです。

 接客マニュアルを使わないので、ひょっとしたら、

「え〜!ここは接客の仕方も知らないのか!」

と、お客さんが帰ってしまうかも知れません。うまくいかないリスク99%といっていいくらいでした。でも、あの気色悪さを思うと、もう自分たちでやるしかありませんでした。

 ところがふたを開けてみたら、

「ぷかぷかさんが好き!」

というファンが現れたのです。全く想定外のことでした。決してうまくない接客ですが、ぷかぷかさんのあたたかな、楽しい人柄がストレートに伝わったようでした。

「ひとときの幸せをいただきました」

「また笑顔をいただきに行きます」

といったメールをいろんな人からいただいたのです。いやぁ、これは本当にうれしかったですね。

 

 接客マニュアルは、「生産性」の論理から生まれたマニュアルです。その論理に合わせようとすれば、自分を押し殺すしかありません。「自分らしさ」はだめなのです。気持ちがなくても、笑顔を作らなければいけないので、顔が引きつります。

 そういうことに「気色悪さ」の中で気がついたのです。だから、もう自分らしく行こう、それを大切にしよう、そう思いました。

 ですから、ぷかぷかに来ると本物の笑顔に出会い、本物の笑い声に出会います。あたたかな、ホッとする雰囲気に出会います。自由に生きるぷかぷかさんに出会います。

 「ひとときの幸せをいただきました」

 「また笑顔をいただきに行きます」

の言葉はお客さんが見つけた新しい「価値」を明確に語っています。「生産性」の論理でははかれない、社会を豊かにする「価値」です。

 

 

 皮肉にも、生産性の論理そのものである「接客マニュアル」を使おうとしたことが、ぷかぷかで、生産性の価値でははかれない新しい「価値」を作りだしたのです。

 

 

 8月4日(土)のぷかぷか上映会は、そんな新しい「価値」をあちこちに感じられる上映会です。ぜひお越し下さい。

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