ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

いい仕事を提供しようとすればするほど経営が苦しくなる仕組み

 年が明けたら資金繰りがもう少し楽になると思っていたのですが、社会保険、金融公庫返済、固定資産税、住民税、ガス代などが重なり、通帳残高がまた赤字になっていてガッカリ。

 これだけいい活動をやっているのに、どうして楽にならないのかと、悲しくなります。

 ぷかぷかは福祉事業所なので、パン、カフェ、お惣菜、アート商品などの売り上げのほかに利用者さんに対しておこなっている福祉サービス(就労支援)の報酬が入ります。その部分の収入が全体の収入の約三分の二を占め、ぷかぷかにとってはとても大事な収入です。ところが、ぷかぷかのように人も設備もお金をかけて利用者さんと一緒にいい仕事をしようとしても、それに見合うだけの報酬が入ってこないのです。

 報酬は仕事の中身ではなく、利用者さんの人数だけで決まります。ですからいい仕事をしようと、人や設備にお金をかけても、報酬には何の関係もなく、お金をかけた分、損する仕組みになっています。ぷかぷかであれば、無理して今の事業を続けるよりは、パン屋やカフェをやめて、ボールペンの組み立てや割り箸の袋詰めといった軽作業にすれば、報酬は同じですから、経営はぐっと楽になる、というわけです。

 福祉事業所のスタッフの数は、国の基準では利用者さん10名に対し一人です。ぷかぷかであれば、現在利用者さんが38名いますからスタッフは4人でいいことになります。軽作業であれば、その人数で十分やっていけます。現在ぷかぷかには常時25,6名のスタッフが働いています。これが国の基準の4人にすれば、人件費は大幅に減ります。経費の大部分を占める人件費が六分の一になるわけですから、経営的にはものすごく楽になります。

 基本的に長机が何台かあればできる仕事ですから、設備投資もいりません。ぷかぷかはパン屋にはオーブン、ドゥコンディショナー、ミキサー、冷蔵庫、パイローラー、モルダーなど、お惣菜屋にはスチームコンベクション、食洗機、冷蔵庫、フライヤーなど、莫大な設備投資をしているので、その借金返済が月々大変な額になります。

 お店が4軒もあるので、家賃負担も大変です。外販、配達は車4台で回しています。軽作業であれば、お店もいりません。外販、配達もないので、車は1台あれば十分です。

 それで報酬が同じなら、ぷかぷかはパン屋、カフェ、お惣菜屋、アート屋をやめて、軽作業の仕事をやった方が経営的には楽、ということになります。いつもいつも預金残高を気にしながらの経営は、やっぱり疲れるのです。

 

 でもね、どんなに疲れても、そんなことはしませんから安心して下さい。事業というのは、それを回すためのお金は必要ですが、それが目的ではなく、あくまで新しい「価値」を生み出すことだと思います。ぷかぷかが生み出した新しい「価値」は、利用者さんがありのままの自分でいられて、笑顔で働ける職場です。

 利用者さんたちがこんなにも笑顔で仕事を楽しんでいる今、ぷかぷかが今やっている仕事は、たとえ経営が苦しくてもやめるわけにはいかないと思っています。見学に来られる方の多くが、「ここは明るいですね」「楽しそうですね」といった感想を言われます。 それはそのままぷかぷかで働いている利用者さんの姿なのです。

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 以前、軽作業について書いたブログです。

pukapuka-pan.hatenablog.com

 

 利用者さんの人生を支えるようないい仕事を提供しようとすれば、それなりに人も設備も必要です。その分お金がかかります。福祉サービスの報酬が、そこを支える仕組みになっていないので、いい仕事を提供しようとすればするほど、経営が苦しくなる、ということになります。これはどう考えてもおかしいと思います。でも、これが今の福祉サービスの報酬の仕組みです。こんな仕組みのままでいると、福祉の世界でいい仕事を作り出そう、という事業所はどんどん減っていきます。福祉の世界はずっと現状維持のままで、いつまでたってもよくなりません。

 いい仕事を作り出す事業を続けるためには、お金がきちんと回っていないと続けられません。お金が回るというのは、経営が安定し、かつ向上していくことです。ぷかぷかでいえば、今はとりあえず回っていますが、月末は資金が足りるかどうか、未だにハラハラしてるような状態です。パートさんには最低賃金ぎりぎりの給料しか払えていません。高崎に至っては恥ずかしい話、給料は月10万円しかなく、働く時間から計算すると最低賃金をはるかに下回るという情けない状態です。好きでやっている仕事とはいえ、こんなに価値ある仕事をやって時給400円を下回るというのは、やっぱりどこか間違っていると思うのです。冒頭に書いた「これだけいい活動をやっているのに、どうして楽にならないのかと、悲しくなります。」は、日々の実感です。これが福祉サービスの報酬の現状です。こんな状態が続いていけば、労働の現場は疲弊していきます。ぷかぷかが今やっている仕事が続けられなくなる、ということです。

 

 4月になれば、利用者さんが少し増えるので、多少は楽になりますが、あくまで「多少」であって、抜本的な解決にはなりません。

 ではどうすればいいのか。

 ひとつは福祉サービスの報酬に、自主製品でいい仕事を作り出している事業所にはそれなりの加算をつける、ということです。努力していい仕事をすれば、それに応じた加算をつける。当たり前のことだと思います。

 ときどき行政による監査がありますが、これは書類を見るだけで、現場を全く見ません。これを次のように変えることを提案します。

①現場をきちんと見るように改める。目と耳と手と足と皮膚を使って現場を体感する。

②どういう仕事を作りだし、利用者さんはどんなふうに、どんな思いで働いているのか。

③地域社会とどういう関係を作っているのか。地域社会で何を作りだし、地域社会に何をもたらしたのか。

④未来に向けてどのような展望で事業を展開し、何を生み出そうとしているのか。

⑤そういったことを最低でも一週間はかけて現場をしっかり見る。

⑥担当者は現場をしっかり見る、敏感に感じ取ることのできるスキル、センスを身につける。

⑦その上で、いい仕事を作りだしている、という評価が出れば、それなりの加算をつける。

⑧加算の額は、事業がうまく回るためにはどれくらい資金が必要かを会計事務所にもヒアリングしてきちんと計算する。

⑨始めに報酬額があるのではなく、事業を支えるためにはいくらお金がかかるか、という視点で報酬額を決める。

⑩評価は報酬を決めている国にフィードバックする。国はなかなか動かないから県もしくは市で加算を実行する。

 こんなことはその気になればすぐにできることだと思います。本気で福祉の世界をよくしようと思っているのか、利用者さんの人生を本気で支えようとしているのかどうか、そういったことが担当者に問われていると思います。

 こういう調査が入れば、福祉の現場も仕事の質が問われることになり、福祉の世界は格段によくなると思います。

 

 もうひとつはやはり事業所自体がお金の回る仕組みをきちんと作っていく、ということだと思います。いい仕事をしながらお金が回る仕組みはどうやったら実現できるのか、ということです。ぷかぷかはやはりそこが作り切れてないように思います。

 ただ金銭上の売り上げを増やすというのではなく、ぷかぷかにしかない「価値」を、どんなふうにしてお金が回る仕組みに取り込んでいくのか、ということだと思います。ぷかぷかでパンを買うと、パン+アルファの価値がついてきます。ぷかぷかカフェで食事をすると、食事のおいしさ+アルファの価値がついてきます。その「価値」は社会全体を幸せにするものだと思います。そういったものをもう少しうまくお金の回る仕組みに取り込めないかと思うのです。今までにない「価値」をビジネスの軸に据える、ということです。

  とてもむつかしいことですが、チャレンジする価値はあると思います。