ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

日経ソーシャルイニシアチブ大賞

  • 日経新聞が主催している「ソーシャルイニシアチブ大賞」にエントリーすることにしました。以下の3点を満たすことがエントリーの条件です。

 

  • 1. 社会性  社会的課題の解決を事業のミッションとしている
  • 2. 事業性  ビジネス的手法を用いて継続的に事業活動を進めている
  • 3. 革新性  新しい事業モデルや社会的価値を創出している

 

で、以下の原稿を書きました。こういうお話はわくわくしながら書くことができるので、昨日一日楽しみながら書かせてもらいました。

 

1.社会性について (事業の目的、ミッション、解決を目指す課題など)

事業の目的:障がいのある人たちの就労を支援する。(就労継続支援B型事業所)

ミッション

①障がいのある人たちといっしょに、お互い気持ちよく生きていける社会を実現する。

②健康な「命」を未来に引き継いでいく。

そのために、

①障害のある人たちと街の人たちの出会いの場として、パン屋とカフェを街の中に開く。

②「障がいのある人たちとはいっしょに生きていった方がいいよ」というメッセージをさまざまな形で発信する。ホームページ、「ぷかぷかしんぶん」(毎月5,000部発行)

③生産の効率が落ちても、彼らといっしょに働いた方がいい、という新しい価値観を生み出す。

④「仕事っておもしろい!」と思えるような楽しい仕事を利用者さんに提供する。

⑤安心、安全なおいしいパン、食事を提供する。安心、安全な素材を厳選する。材料費が高くなるが、健康な「命」を未来に引き継いでいく、ということを最優先に考える。

 

解決を目指す課題

①口にはしないものの、障がいのある人たちのことを「何となくいやだな」と思っている人は多い。障害者施設を建てようとすると、地元市民から反対運動が起きることさえある。これは障がいのある人たちに問題があるのではなく、彼らのことを知らないことによって生じている。何となく怖いとか、不気味、といった印象は、彼らのことを知らないことから生まれる。“知らない”ということが彼らを地域から排除してしまうことになる。

 彼らの生きにくい社会、異質なものを排除してしまう社会、他人の痛みを想像できない社会は、誰にとっても生きにくい社会になる。誰かを排除する意識は、許容できる人間の巾を減らすことにつながる。社会の中で許容できる人間の巾が減ると、お互い、生きることが窮屈になる。これは同じ地域に暮らす人たちにとって、とても不幸なことだと思う。逆に、彼らが生きやすい社会、社会的弱者が生きやすい社会は、誰にとっても生きやすい社会になる。そういう社会はどうやったらできるのか。その問いへの一つの答が、街の中に障がいのある人たちの働くパン屋を作ることだった。

 

②障がいのある人は生産の効率を落とすというイメージが強いため、就職することがきわめて困難。生産の効率が落ちても彼らといっしょに働いた方がいい、という新しい価値観を「ぷかぷか」は創り出している。

 

③知的障がいの人には単純作業が向いている、と思っている人がいまだに多い。そのため、障がいのある方は、そういうむなしくなるような仕事を与えられることが多い。仕事がつまらないと、毎日がつまらない。仕事がおもしろいと、毎日がおもしろくなり、人生が充実する。

 

③添加物だらけの食べ物が多い中にあって、みんなの大切な命が深く傷ついている。そんな中で「安心して食べられるおいしいパン」「安心して食べられる食事」の提供は、未来に向けて健康な命を引き継いでいく、というとても大事な仕事だと思う

 

 

2.事業性について (事業の実績、規模、収支状況、今後の計画)

事業の実績:2010年4月パン屋、カフェ、開店。当初は利用者さん(障害のある人たち)の声がうるさいとか、うろうろして目障りだとか、色々苦情もあったが、時間が経つにつれ、地域の人たちも障害のある人たちに慣れてきて、苦情も無くなった。

 ホームページを立ち上げ、《障害のある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ》というメッセージを様々な形で発信している。現在アクセス数は38,000人を超えている。『ぷかぷかしんぶん』(毎月5000部発行。お店の周辺の家に配布)はパン屋、カフェの宣伝だけでなく、利用者さんの色んなエピソードも紹介し、毎月楽しみにしている人が多い。

 パン屋、外販の売上げも少しずつ増え、最近はカフェも含め一日の売上げが10万円を超えることもある。初めて1年目の頃は3万円くらいしかない日が続いていた。カフェは4年目に入り、毎日ほぼ満席状態で、入れないお客さんも多い。利用者さんの心のこもった接客に心打たれたというお客さんも多く、つい先日は子どもの誕生会をカフェでやったあと、利用者さんと一緒に写真を撮らせて欲しいというお客さんも現れた。始めた当初、苦情の電話に頭を悩ませていた日々を思うと、この時に撮った写真は、本当にこの1枚の写真を撮るためにこの4年頑張ってきた、という気がする。ホームページ(「ぷかぷかパン」で検索するとすぐに出てきます)の「ぷかぷか日記」1月19日を見て欲しい。

 この写真こそが、数字では表せない「ぷかぷか」の4年間の実績を、目に見える形で表現している。ミッションで掲げたものがほんの少し実現したように思う。 

 

規模利用者(知的障害、精神障害)25名、スタッフ17名。パン屋、カフェ、工房(クッキー、ラスク作り、給食、休憩室)の3カ所で仕事を行っている。外販先は区役所、養護学校子育て支援拠点など16カ所、配達先は保育園、病院など12カ所。近くのレストランへはランチに出すパンを毎日配達している。

 

収支状況:24年度の収益はパン、カフェの売上げが14,630,861円、福祉サービス報酬が44,889,698円、寄付が350,000円、イベント収益が125,498円、雑収入が2,564,463円、収入合計62,560,762円。支出は人件費が31,728,484円、経費が25,094,721、管理費1,972,460円、支出合計58,795,665円、収支差額3,765,097円            23年度の収入合計54,327,326円、支出合計53,173,830円、収支差額1,153,496円   22年度の収入合計35,621,466円、支出合計36,892,736円、収支差額△1,271,270円 

 

今後の計画:お弁当、お総菜事業、アート事業を2014年4月よりスタートさせる。お弁当お総菜の売上げは1日あたり22,100円、月に442,000円、年間で5,304,000円を目標にしている。アート事業は年間480,000円、パンは18,000,000円、カフェは2,870,000円、合計で26,650,000円を目標にしている。 また利用者さんの定員を2014年4月より20名から40名に増やす。

 

 

3.革新性について (事業の特徴、新しさ、優れている点など)        

事業の特徴:「障がいのある人たちと一緒に生きていきたい」という創業者の思いから「ぷかぷか」は始まった。だから「ぷかぷか」はまず障がいのある人たちとスタッフが一緒に生きていく場、一緒に働く場としてある。

 「ぷかぷか」は街の中にお店を構え、障がいのある人たちと街の人たちのいい出会いの場としても機能している。パンを買いに来たついでに、あるいは食事をしに来たついでに、なにかあたたかいものをお土産に持って帰るような、そんなお店だ。そのお土産には「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ」といったメッセージも入っている。このメッセージは「ホームページ」や「ぷかぷかしんぶん」でも発信しているが、あたたかなお土産に勝るものはないと考えている。言い換えれば、直接ふれあい、出会うことが一番大事、と言うことだ。

    

優れている点:①「ぷかぷか」は就労継続支援B型の福祉事業所として、県の指定を受けている。従って利用者さんがいる限り、毎月福祉サービスの報酬が確実に入る。パン、カフェの収入の倍以上あって、これが事業の安定を生んでいる。障がいのある人たちと一緒に生きる、一緒に仕事をする、ということが、そのまま「就労支援」になり、それが福祉サービスの報酬として入ってくるので、事業が安定して継続できる。福祉事業所として安定した収入を得ながらミッションを実現していく、というのは事業の継続性を考えれば、ひとつの優れた方法だと思う。

 

②「ぷかぷか」では利用者さんは仕事を楽しんでいる。介護認定調査でケースワーカーさんの聞き取り調査の時「前にいた事業所ではいつもうつむいていましたが、今はまっすぐ前を向いて生きています」と言った利用者さんがいたが、それくらい毎日が充実している、ということだと思う。仕事が楽しいと感じ、そのことで毎日が充実していないと、なかなかこんな言葉は口に出来ない。

 

新しさ:この4月から始めるお弁当事業は地域のお年寄りの方を対象にした配達に力を入れたいと考えている。配達のついでに、お話好きの利用者さんがお年寄りの話し相手になってくる。利用者さんとの楽しい会話は、お年寄りの方を元気にするような、とてもいい時間になると思う。おいしいお弁当と一緒に、そんなふうに、なにかホッとするような、あたたかいものが届けられれば、と思う。

 こういう仕事は、利用者さん(=障がいのある人)でないとできない仕事だと思う。こういう仕事を積み重ねていって、「障がいのある人とはいっしょに生きていった方がいいね」と思う人が増えてくるなら、地域社会は少しずつ変わってくる。こんなふうに考えていくと、お弁当の配達は、お互いが気持ちよく生きる社会に向けて、地域社会をデザインしなおすような、そんなダイナミックなものが含まれているように思う。 お弁当の配達だけでなく、彼らの働くパン屋やカフェが街の中にあること自体、地域社会をデザインし直しているのだと思う。そんな風な視点からパン屋やカフェを見直していくと、地域社会の中でとても大事な役割を果たしていることが見えてくる。

 

 

4.事業者について (事業団体・会社の概要、沿革、代表者略歴など)

 

事業団体:運営主体は「NPO法人ぷかぷか」。2009年9月16日神奈川県より法人として認証。2009年9月30日法務局に設立登記。2010年4月1日神奈川県より福祉サービス事業所として指定。 

 

団体の概要,沿革:2010年4月「カフェベーカリーぷかぷか」と「ぷかぷかカフェ」のお店を開く。就労継続支援A型として利用者さん10名、スタッフ7名でスタート。場所は横浜市緑区霧が丘にあるUR都市機構の霧が丘グリーンタウンの商店街の一角。  2011年7月、就労継続支援B型に変更、利用者さん17名、スタッフ12名。 新たに店舗付き住宅を借り、「工房」としてクッキー、ラスクの製造、給食、休憩スペースを作った。 2014年1月現在、利用者さん25名、

 

スタッフ代表者略歴養護学校勤務30年の中で、障がいのある人たちに惚れ込み、彼らと一緒に生きていきたいと、退職金をはたいて障ある人たちと一緒に働く場「カフェベーカリーぷかぷか」「ぷかぷかカフェ」を立ち上げた。

商売は全く未経験だったので、1年目は本当に悪戦苦闘の毎日。経営的にもかなり危ない状態だったが、幸いすばらしい経営アドバイザーと出会い、3年目にしてようやく黒字に転換した。

お金がないのでホームページも自分で作り、毎日自分の思いを書き続け、現在アクセス数は38,000人を超える。ブログは毎日更新し、こちらは開設5ヶ月でアクセス数が10,000を超えた。昨年2月には地元の社会福祉協議会主催の講演会に呼ばれ、「障がいのある人たちと一緒に生きる意味」というテーマで講演を行った。その講演を聴いた方が二人、理念に共感したと「ぷかぷか」のスタッフになってくれた。

 

5.直近1年間のトピックについて

(事業・団体の拡大・成長、新しい事業の追加などここ1年間の話題) 

 

事業の成長:①「ぷかぷか」は就労継続支援B型の福祉事業所として県の指定を受けていて、毎月福祉サービスの報酬が入るのだが、それに寄りかかることなく、パン、カフェの売上げを伸ばす努力をみんなでやっている。昨年と一昨年の12月の売上げを比較するとパンは47%、カフェは25%も増えている。これは現場スタッフ、利用者さんの努力であり、この売上げ増加がみんなのモチベーションを更に高めている。

 

②毎週パンの外販に行っている区役所では、始めた当初はお昼休み1時間くらいで5,000円ほどの売上げだったが、4年経った今、50,000円を超えることもある。売上げが10倍になるというのは驚異的な伸びだが、これはパンが美味しいこともあるが、スタッフだけで売りに行ったのでは、これほどののびはない。外販のある木曜日に利用者さんと会うのを楽しみにしているお客さんが多い。会ってなにかするわけではないが、他愛ない会話をするだけで、元気がもらえるようだ。やはり利用者さんの魅力が売上げを伸ばしている。 

 

③障がいのある人がいると効率が落ちる、と生産の現場からは疎外されることが多いが、区役所での外販を見る限り、彼らのおかげで売上げが驚異的に伸びているのであり、要は彼らの魅力を仕事における「力」としてどんなふうに生かすか、ということだと思う。 

        

④「ぷかぷか」も、スタッフだけで働いた方が、ひょっとしたらパンの生産量は増えるかも知れない。しかし、彼らのいない「ぷかぷか」は、なにかつまらないし、彼らといっしょに働いてこその「ぷかぷか」だと、スタッフたちは思っている。これはまぎれもなく「彼らといっしょに働いた方がいい」という新しい価値観ではないかと思う。効率を超える価値といっていいのかもしれない。 

                 

⑤他の事業所での実習がうまくいかなかった方が「ぷかぷか」に見学に来て、利用者さんが笑顔で働いているのを見て、ここで実習させてください、と言ってきたことがあった。そしてその方自身、毎日笑顔で実習し、明日が待ち遠しくて仕方がない、とまで言っていた。そんな風に利用者さんが毎日笑顔で働くことが出来るというのは、福祉事業所として、すばらしいことだと思う。   

                  

⑥この4月からアート事業を始める。障がいのある人たちの独特の表現を商品化し、彼らのメッセージとして社会に発信していきたい。それは彼らと社会を結ぶ新しいパイプであり、今までとは違う新しい「価値」がそのパイプには詰まっている。そういう「価値」を生み出す人とはいっしょに生きていった方がいい、とたくさんの人たちが思ってくれれば、と思う。