ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

ぷかぷか日記は以下に移転しました。
ぷかぷか日記 – NPO法人ぷかぷか

幸せをいっぱい生きた人の顔を見た気がしました

先ほど紹介した表参道の「ダウン症の子と母の写真展」は文字によるメッセージが一切なかった、と思っていたのですが、映像クリエイターの信田さんから、小さくメッセージが書いてあった、とメールがありました。

 

《 思い描いていた幸せとは違っても、違う幸せがきっとある 》

 

というメッセージで、信田さんは、涙が出た、とメールに書いていました。

 

《 違う幸せがきっとある 》

写真達は私たちの方をきっちりと見て、そう言い切っているように思いました。

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 私は養護学校で勤務する前、採用試験の面接で、養護学校へ行く気があるかどうか質問を受けました。私は小学校に行くつもりで試験を受けたのです。三つの選択肢がありました。①養護学校がいい ②養護学校でもいい ③養護学校はいや  の三つです。私は養護学校に行きたかったわけではなく、かといって、どうしてもいや、というわけでもなく、ま、養護学校でもいいか、と②を選択しました。

 養護学校に行く人がいなかったのか、すぐに養護学校の校長から電話が入り、養護学校へ行くことになりました。なんの期待もしていませんでした。

 ところがそこで障がいのある子ども達に出会ってしまったのです。

 私が勤務した養護学校は知的障がいの子ども達の学校でした。おしゃべりができない、字が読めない、着替えができない、うんこの後始末ができない…と、できないことだらけの子ども達でした。でも、そんな子ども達と日々格闘(本当に私にとっては「格闘」でした)する中で、なんと彼らと出会ってしまったのです。

 すごい大変な子ども達で、毎日毎日想定外のことをやってくれる彼らを相手にどうしていいかわからず、「ひゃ〜、どうしよう、どうしよう」とおろおろしていました。でも、よ〜くつきあってみると、とにかくすっごく楽しくて、そばにいるだけで心がなごみ、あたたかな気持ちになれるのです。え? 何? この気持ち? と思いながらも、どんどん彼らのこと好きになってしまったのです。

 そんなふうにして障がいのある人たちと出会い、以来人生が大きく変わりました。

 あれからもう38年、今、彼らのそばにいて、毎日がすごく楽しくて、とても幸せを感じています。障がいのある人たちに、幸せにしてもらったのです。

 

 ダウン症の子のお母さんたちの存在感ある写真達。苦労しながらも、子どもと出会い、幸せをいっぱい生きた人の顔を見た気がしました。

 

★写真展は明日までです。地下鉄表参道の地下通路です。

人の生きている重み、生きてきた重みが…

 渋谷のサービスグラントに行く用があって、表参道の駅の通路で催されているダウン症の子と母の写真展を見てきました。

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 モノクロの、すばらしい写真展でした。言葉は一切ありません。

 人の生きている重み、生きてきた重みがストレートに伝わってきます。ダウン症の理解とか、そんなレベルではない、人が生きていること重みそのものが、きっちりとこちらを向いた顔から伝わってくるのです。

 相模原障害者殺傷事件が起き、私はそのことについていろいろ言葉で語ってきました。そういうメッセージをはるかに超えるものを、この写真達は語っているように思いました。

 この写真達を前に、たとえば「障害者はいない方がいい」などと語れるのかどうかです。それくらい揺らぎのない、人の存在する意味をそのまま差し出している気がしました。

 あーだこーだ言わず、写真達の前に黙って立つ、そんなことぐらいしかできない気がしました。

 

 写真達を見ながら信田さんのメッセージを思い出しました。

  プロモーションビデオ第2弾を作っている信田さんは6月17日(土)みどりアートパークでの上映会に向けてこんなメッセージを寄せてくれました。

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今回の映像の打ち合わせが始まったのは2016年秋、当初高崎さんは7月に相模原でおきた障がい者殺傷事件に強い憤りを感じていて、事件に対する具体的なメッセージとしての映像を望んでいた。しかし具体的なメッセージを描こうとすればするほど、僕は意見の異なる人たちと同じ土俵に上がることへの違和感を感じるようになっていた。同じ土俵に上がることは同じモノサシで意見を述べることであり、「いなくなればいい」とか「いた方がいい」という直線的な論議では、ぷかぷかが生み出している豊かな空気感(仮にぷかぷか現象と呼ぶこととする)を伝えきれないと思ったのだ。もっと立体的な座標軸の中でぷかぷか現象を捉え映像にすることで、結果としてメッセージになるようにしたいと思った。

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 どうも私たちはこの直線的な議論にはまってしまいがちです。

 表参道の写真達は、そんな議論を超えたところで、まっすぐにメッセージを伝えているように思いました。

 

 

 表参道の写真展は14日の母の日までです。ぜひお出かけ下さい。黙って写真の前に立ってみて下さい。写真達の語りかけてくるメッセージに耳を澄ませて下さい。 

h-navi.jp

雑誌『そよ風のように街に出よう』が残したもの

『そよ風に街に出よう』という雑誌の編集をやっている小林さんが取材に来ました。週刊号にぷかぷかの話を載せるそうです。

 

『そよ風のように街に出よう』最新号

 

『そよ風に街に出よう』は37年前、障がいのある人たちに「そよ風のように街に出よう」と呼びかけて、スタートしました。当時、障がいのある人はほとんど街に出ることなく、家に閉じこもっていました。閉じ込められていた人もたくさんいました。そういった社会的状況に中で「そよ風のように街に出よう」という呼びかけは大きな反響を呼んだようでした。

 街に出た障がいのある人たちの話をふつうの人たちに届けたりもしました。障がいのある人たちを取り巻く社会的状況を、そうやって少しずつ変えてきました。

 書きようによってはすごく重くなる記事をさらっと軽く書いて、それでいてしっかり中身が伝わってきて、そのセンスがすばらしいと思っていました。それでも時代の波から取り残されるように部数がどんどん減って、ついにこの夏、終刊号を迎えます。

 関西テレビが「そよ風」が37年かけてやってきたことを相模原障害者殺傷事件に関連づけて1時間の番組にまとめていましたが、とてもいい番組でした。障がいのある人たちが街に出て、どんな風に世界が広がっていったのかを丁寧に追いかけていました。

 梅谷庄司さんは奈良の山奥で暮らしています。その山奥まで小林さんを始め、いろいろな方が庄司さんの生活を支えにやってきます。小林さんは月2回、2時間半もかけて庄司さんのところへ出かけていきます。そんなおつきあいを40年も続けてきたそうです。庄司さんは部屋にあるエアコンとかテレビなどすべてぶっ壊し、自分の着ている服も破り捨ててしまいます。とにかく大変な方です。それでも小林さんは、庄司さんのところへ出かけると、なんかホッとするものがあるといいます。だから40年も続けてこれた、と。

 関西テレビは小林さんと一緒に庄司さんを訪ねます。服を破り捨てて裸で座り込んでいる庄司さんは、なんとも言えず人間味があって、会いに行きたいと思うくらいの人でした。小林さんが40年も通い続けてきた理由がわかる気がしました。

 番組を見て「どうしてあんなに大変な人を施設に入れないんだ」という人もいたそうです。私はなぜかにんまり笑って「ああ、会いに行きたい」と思いました。この受け止め方の落差は目がくらむほどに大きいですね。

 『そよ風のように街に出よう』は、この落差を埋めようと37年もがんばってきたのだと思います。雑誌はこの夏で終わりますが、小林さんはまだまだ庄司さんのところへ通い続けます。

 そういう関係を日本のあちこちに作ったこと。それが『そよ風』の功績だろうと思います。関西テレビはそのいくつかを番組で紹介していました。

 「かなこさん」という重度の障がいを持った女性を紹介していました。日常のすべてに介護が必要な方で、「チームかなこ」という若い女性チームがそれを担っています。かなこさんと一緒に街に出かけ、喫茶店に入り、わいわい言いながら注文をします。もちろんかなこさんはおしゃべりしないのですが、それでもチームかなこの人たちと何を注文するかでわいわい楽しそうにやっているのです。大学のゼミで、かなこさんと一緒に、かなこさんとのおつきあいの中で見つけたことを学生達の前で発表します。チームかなこの一人が結婚したときは、かなこさんもきれいにお化粧してもらい、ステキなドレスを着せてもらって結婚式に出席します。結婚式のあと、新郎新婦、チームかなこの人たちに囲まれて楽しそうに話をしているシーンは、ちょっと涙が出ましたね。

 「そよ風のように街に出よう」って言う呼びかけは、あちこちでこういうおつきあいを生んだのだろうと思います。雑誌は終わっても、あちこちの関係はこれからも続きます。その関係が社会を少しずつ、お互いが生きやすい社会に変えていきます。

 

 ★関西テレビの番組、録画したDVDがあります。見たい方はぷかぷかまで連絡下さい。pukapuka@ked.biglobe.ne.jp 高崎

 

ツジさんのイタリア報告

ツジさんは連休にイタリアまで行ったそうです。その報告です。私なんかは絶対に覚えられないようなカタカナの地名が機関銃のように次から次に出てきて、記憶力のよさにあらためでびっくりでした。

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湘南ヴィヴィットアート展の動画ができました。

 湘南ヴィヴィットアート展の動画ができました。ぷかぷかの第3期演劇ワークショップの記録映画をまとめた𠮷田拓史さんの作品です。

 ちょうど音楽会をやったときの映像が入っていて、湘南ヴィヴィットアート展の幅広さがよくわかります。こうやって絵を媒介にいろんな人が集まる広場なんだと思います。

 

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湘南ヴィヴィットアート展へぜひお出かけください。

湘南ヴィヴィットアート展に行ってきました。

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昭和4年に建てられた蔵をそのまま使った、とてもあたたかな会場でした。

これが入り口

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入り口を入ったところ。右上に神棚があるあたりがここのおもしろいところ。

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所狭しと作品が並んでいます。

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ぷかぷかの三人の画伯に似顔絵を描いてもらいました。

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のぼさんの絵はおとなしすぎるので、あとで色をつけてもらって、こんな感じにしてもらおうと思っています。似顔絵名刺にこんな絵が載ってたら、もう相手がのけぞってしまって、すごくおもしろいんじゃないかと思うのです。

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同じ会場で似顔絵を描いていたとしきさんにも描いてもらいました。

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 としきさんはものすごく絵のうまい方ですが、絵と全く関係ない作業所で働いているので、作品はほとんど埋もれたままになっているようでした。なんかすごくもったいない気がして、ぷかぷかに来ませんか、と誘いました。ぷかぷかはメンバーさんの絵を社会に出していこうといろんな試みをしています。彼らの絵が社会に出て行くことで、社会が豊かになっていくと考えるからです。お母さんは時々Instagramでアップしてるそうですが、ぷかぷかはもっとダイナミックな形で社会に出して行こうとしています。

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プロボノ活動をやっているサービスグラントにはアートを企業に売り込む営業資料を作ってもらう予定です。

pukapuka-pan.hatenablog.com

 先日のプレゼンテーションでは詳しい説明を聞きたいと15人ものプロボノワーカーが集まったそうで、もうすぐプロジェクトチームがスタートします。

  

 湘南ヴィヴィットアート展は8日(月)までです。ぜひお出かけください。

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pukapuka-pan.hatenablog.com

 

あなたとの人生、なかなか悪くないよ

 今朝の朝日新聞生活欄の「患者を生きる」ー医療的ケア児④ は子どもに寄り添うお母さんの言葉が光っていました。

digital.asahi.com

 重度の脳性麻痺で寝たきりの子ども(6才)の介護を家で続けています。たんの吸引などの医療的ケアが必要なので、本当に大変です。今年の4月、特別支援学校の1年生になりました。入学式は通院以外の初めての外出だったそうです。子どもたちの声が響く学校。帰りたくないと、聞いたこともない低い声で「う〜」と訴えてきたそうです。授業は週一回、先生が自宅を訪問して行われます。

 一日の介護がすべて終わると、もうくたくたです。子どものベッドの隣に折りたたみ式のベッドを置いてお母さんは寝ます。子どもの小さな手を握り、肌のぬくもりを感じながら語りかけます。

「あなたとの人生、なかなか悪くないよ」

 

 この言葉が出てくるまでにどれほどの苦労があったのかと想像します。出産直後の大混乱、低酸素性虚血性脳症で自発呼吸はほとんどなし、「脳の機能は戻らないと思います」と医者から残酷な告知、自宅介護中、目が細菌に感染して角膜がとけてしまい、眼球の摘出手術、夫とも離婚、毎日毎日待ったなしの介護生活。そんな想像を絶する苦労をしながら尚も

「あなたとの人生、なかなか悪くないよ」

と語るお母さん。子どもといっしょに本当にいい人生を送っているんだろうなと思いました。

 たとえ相手が重度の脳性麻痺で寝たきりの子どもであっても、そういう人生が創り出せるということ。人生の深さと希望を感じます。

 

 障がいのある人たちとおつきあいしている私たちこそ、相手の前で語りたいですね。

「あなたとの人生、なかなか悪くないよ」

って。障がいのある人たちとの人生が豊かなものになる気がします。