5年前の事件直後、神奈川県障害支援課から防犯設備を設置する場合はお金を出します、といった趣旨のメールが何度も来ました。神奈川県の事件検証委員会の報告書に防犯上の問題が事件の原因であるようなことが書いてあったためだと思われます。報告書にはやまゆり園の支援の実態には全くふれていなくて、問題のすり替え、といった感じでした。やまゆり園の責任とその監督庁である神奈川県の責任を避けた、という印象でした。
いずれにしても、その報告書を受けてのメールだったと思いますが、ぷかぷかは障害のある人たちと地域の人たちの出会いの場としてお店を作ったので、地域に対して塀を高くするようなことは一切しませんでした。お店はいつもオープンであり、帰りの会に地域の人たちが参加することも度々ありました。赤ちゃんを抱っこしたお母さんが帰りの会に参加したことがありました。たまたまその子の誕生日だったので、ぷかぷかさんたちみんなでハッピーバースデーの歌を歌いました。そばにいたお父さん、思いもよらないハッピーバースデーの歌に感激して涙を流していました。そんなおつきあいが事件後も変わりなく続いていました。
昨年5月に開所した生活支援事業所「でんぱた」も、地域とのつながりを大事にしていました。畑仕事をぷかぷかさんと地域の人たちが一緒にやるのです。
7月15日にNHKニュースウオッチ9で、その「でんぱた」を1年間取材したまとめが放映されました。
田植え、稲刈りは地域の人たちがたくさん手伝いに来てくれました。
こうやっておつきあいした地域の人たちの言葉がすごくいいですね。
事件の犯人が、障害のある人たちとこういうおつきあいをしていれば、事件は起きなかったと思うのです。どうしてこういう当たり前のふつうのおつきあいができなかったのでしょう。「支援」という上から目線の関係は、相手と人としておつきあいすることを排除してしまうのでしょうか?
「でんぱた」もすべてが順風満帆ではありません。彼らの大声がうるさいと苦情が来たり、「でんぱたしんぶん」を持っていっても、素直に受け取ってくれない方もいたようです。
ま、でもこういう声としっかり向き合うことが大事だと思います。どうしてこういう声が出てくるのか、どういう社会的な背景があるのか、それに対して私たちは何をすべきなのか、何ができるのか。それを考えて考えて考え抜くこと。それが私たちの人間を磨きます。
こういう問題に特効薬はありません。地道に地域で関係を広げていくことと、彼らの魅力を様々な形で発信していくこと、そしてそれをとにかく続けていくこと、それが大事だと思います。
ぷかぷかさんたちのこと好きになった人が少しずつ増えているのですから、ここには希望があります。
小さな「ともに生きる社会」「共生社会」がここにできつつあります。