ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

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ぷかぷか日記 – NPO法人ぷかぷか

映画『ぼくはうみがみたくなりました』を、ぼくは上映したくなりました。

 映画『ぼくはうみがみたくなりました』を見ました。

 自閉症の青年の振る舞いをあたたかい目線で 語る心温まる映画でした。たまたま自閉症の青年淳一君を車に乗せることになったドライバーの明日美さんの変わっていく様子がすごくよかったですね。障がいのある人と出会う、お付き合いするということがどういうことなのか、映画は丁寧に語っていました。

 

 一点だけ引っかかるところがありました。自閉症の青年淳一君と明日美さん、昔淳一君を保育園で預かった元園長先生、その奥さんが宿に泊まり、食事の際、淳一君がほかのお客さんの子どものミニカーを取り上げて見つめる場面がありました。なんの問題もなくすぐに返したのですが、子どものお父さんは

「どうしてこんな人がここに泊まっているんだ。こんな人は病院に入れておけばいい。その方が幸せだ」

などといいます。こういう人は社会にいっぱいいますね。

 その場では返す言葉もなく、引き下がるのですが、その夜園長先生が明日美に話しかけます。

 障がいのある人たちの生まれてくる確率を仮に1%とした場合、その1%の人たちが障害を引き受けてくれたおかげで99%の人は普通に生きていくことができる。だから99%の人は障害を引き受けてくれた1%の人を邪魔者扱いしないで、感謝して欲しいんだよなぁ、という台詞がありました。

 

 あ、またこの話か、と思いました。障がいのある人たちが存在する理由を美しく説明するいわばファンタジーです。子どもの障害をどうしても受け入れられない親御さんにとっては、気持ちが楽になるお話です。映画の感想に、あの場面で涙が出ました、と感想を書いていた障害のある方のお父さんがいました。

 気持ちが楽になる方がいれば、それはそれでいいのですが、「こんな人は病院に入れておけばいい」と障がいのある人たちを社会から排除してしまう考えが蔓延しているこの社会の問題は、やっぱりほっとくわけには行かないと思います。

 何よりも障害当事者のありのままを受け入れるのではなく、ファンタジーの方を受け入れるのであれば、当事者との関係で豊かなものが生まれる、といったことがなくなります。これはすごくもったいないことだと思います。いや何よりも当事者に対して失礼です。

 

 社会の問題について考えます。障がいのある人たちを社会から排除してしまうと、社会が受け入れる人の幅が狭くなります。お互いが息苦しい、窮屈な社会になっていきます。

 障がいのある人たちは生産性が低いと社会から排除されがちですが、生産性だけで人を評価する社会は、なんだか疲れます。何よりも人間の大事なものを見失います。生産性以上に大事なものを人間はいっぱい持っているからです。

 『ぼくはうみがみたくなりました』はそのことをとてもうまく伝えてくれます。 

 淳一君のような人がいるからこそ、社会がゆるっとし、ほっとできる空間ができます。映画があたたかいのは、それを映像としてうまく表現しているからだと思います。

 もちろん淳一君と初めて出会った人はちょっとびっくりしたり、戸惑ったりすることもあります。でも、そのびっくりやら戸惑いやらを経験し、社会は少しずつ丸くなっていきます。とげとげした社会が丸くなるのです。明日美さんの変わり様は、それをうまく象徴していると思いました。

 そして映画全体に感じられるあたたかさこそが、障がいのある人たちといっしょに生きていくことで生まれる豊かさです。ありのままの彼らを受け入れることで生まれる豊かさです。

 

 そういうものがストレートに伝わってくる映画『ぼくはうみがみたくなりました』を、ぼくは上映したくなりました。コロナウィルス収まったらぜひやりたいと思っています。

 

 ★『ぼくはうみがみたくなりました』はゴールデンウィーク中無料で公開しています。

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