ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

ぷかぷか日記は以下に移転しました。
ぷかぷか日記 – NPO法人ぷかぷか

「ともに生きる社会」って、彼らに対して、素直にそう思える社会

 先日Facebookに載っていた写真。 

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 なんて気持ちよさそうに寝てるんだろう。見ているこちらまで幸せな気持ちになります。

 パン屋に来て、幸せな気持ちになれるって、なんだかトクした気分。こういうお店は、日本広しといえども、そうそうありません。

 ぷかぷかさんがいてこそ、生まれてくる雰囲気です。私たちだけでは、絶対に生まれない雰囲気。そういう意味では、彼らには感謝しかありません。

 「いっしょに生きててよかったなぁ」しみじみそう思います。そして何よりも思うのは「あなたにいて欲しい」。

 「ともに生きる社会」って、彼らに対して、素直にそう思える社会だと思います。そう思える関係が作り出す社会です。

 

 そう思える関係をどうやって作るか。

 ぷかぷかは、彼らといっしょに生きていきたいと思って始めたところです。その結果、ぷかぷかは小さいながらも「ともに生きる社会」を生み出しました。その社会にある「心地よさ」をぜひ味わいに来てみて下さい。

 

彼らの方がね、なんか、いい人生生きてる気がするのです。

 今日のぷかぷかのFacebookに載っていた写真

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スタッフ「どうしたの?」

ぷかぷかさん「くつろいでいるのですよ」

 

 なんて自由なんだ、って思いましたね。ほんと、うらやましいくらい。

 なんだかんだとえらそうなこといっても、悲しいかな、私たちはこんな風に自由にはなれません。どうしてなんだろうって思います。

 人間、何が幸せかって、心が自由であることだと思います。

 たとえば昼休み、こんな格好で堂々と寝ることができることです。

 有り余るほどのお金があることよりも、こんな風に堂々と寝ることができることの方が幸せな感じがするのです。

 彼らの方がね、なんか、いい人生生きてる気がするのです。

 

7月6日(火)午後8時からEテレのハートネットTVでぷかぷかの活動と尾野一矢さんの自立生活を紹介

 7月6日(火)午後8時〜8時30分 EテレのハートネットTVでぷかぷかの活動と尾野一矢さんの自立生活が紹介されます。再放送は翌週13日(火)午後1:05~です。

www.nhk.or.jp

 

 相模原障害者殺傷事件から5年たちましたが、障害のある人たちを取り巻く社会はそれほど変わったとは思えません。

 障害のある人たちのためのグループホームを建てようとすると、多くの場所で建設反対運動が起こります。自分の住んでいるところに「障害者はいない方がいい」と言っているわけで、犯人と同じ発想です。

 社会にはいろんな人がいた方が、社会の幅が広がり、豊かになります。社会から障害者を締め出してしまうと、その分、社会の幅が狭まり、私たち自身が息苦しくなります。

 ぷかぷかは

 「障害のある人たちとはいっしょに生きていった方がいいよ」「その方がトク!」

と言い続けています。彼らといっしょに生きていくと毎日が楽しいからです。心がゆるっとします。とがった心が丸くなります。生きることが楽になります。ぷかぷかに来るとそのことを肌で感じることができます。

 今度のハートネットTVでも、そのことが少しでも伝わるといいなと思っています。

 

 Eテレの取材風景です。ノリノリのディレクターの姿がいいなと思います。

www.youtube.com

ぷかぷかさんたちの手際の良さにびっくり

 福祉事業所では

「障害者が作ったものだから買ってあげる」

といった関係がよくあります。でも、そういう感じで買ってもらうって、なんか嫌だなと思っていました。何よりも、そういった関係ではいいものはできません。そうではなくて

「おいしいから買う」

という関係をこそ作りたいと思いました。

「おいしい」 

というところで勝負するのです。ほかのお店に負けないくらいおいしいものを作る。材料にこだわり、作り方にこだわり、とにかくおいしいものを作ることをぷかぷかは大事にしてきました。

 結果、おいしいから買う、という当たり前のお客さんが増えただけでなく、ぷかぷかさん自身が質の高い仕事、本物の仕事をすることで、びっくりするくらい成長していました。

 そんなことを思うのは、先日久しぶりに厨房を覗かせてもらい、ぷかぷかさんたちの手際の良さにびっくりしたからです。

 

 その日は魚のフライの仕込みをしていました。三人並び、最初の人は魚に粉をつけて次の人に渡し、次の人は溶き卵をつけ、最後の人はパン粉をつけます。

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 右側のナオコさんは魚に小麦粉をつけ、次の人のボウルに入れます。ナオコさんは障害等級はA2なので、障がいの重い方です。でもここでは、三人並んだ仕事のペースメーカーになっていました。スタッフはそばについていません。

 ナオコさんは障がいは重いけれども、与えられた仕事をきちんとこなす方です。福祉事業所によくある単純作業ではなく、おいしいものを作る、という本物の仕事をこなしてきました。それを毎日くりかえす中で、ナオコさんはその場のペースメーカーになるほどに成長したのだと思います。

 

 準備ができたのを見計らって、ナオコさんが小麦をつけた魚を次の人のボウルに入れるところからこの三人組の仕事が始まりました。

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 次々に魚を回していきます。

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      粉をつけます。

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      溶き卵をつけます。

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      パン粉をつけます。

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 流れるような仕事ぶりにびっくりしました。三人の呼吸が合い、仕事がどんどん進みます。いつもこのメンバーでやるわけではなく、誰がやってもこんな風に仕事が流れるそうです。

 彼らをここまで持ってきたスタッフさんの働きがすごいなと思いました。そばで何にもいわなくても、ここまで仕事をやってしまうぷかぷかさんの成長にびっくりしながら、彼らを支えてきたスタッフさんの働きに頭が下がりました。スタッフさんたちに感謝!感謝!です。

 

 障がいの重い方が、仕事の現場でペースメーカーになっているなんて、痛快じゃないですか。素晴らしいのひと言です。

 おいしいもので勝負しよう、という目標が、こんなふうにみんなを成長させ、みんなが生き生きと働く現場を作り出したのだと思います。

 

 何年か前、区役所の販売でほかの福祉事業所の弁当販売と重なったことがありました。私はお互い競争すればもっとおいしい弁当ができるんじゃないかと思ったのですが、相手は「うちは福祉ですから、競争はしません」なんていい、なんか力が抜けました。区役所が調整して、その事業所とは別の日になったのですが、なんだかなぁ、という感じでした。

 「福祉だから競争しない」って、ま、競争しなくても福祉サービスの報酬が入るので事業は回るわけですが、職場の活気は生まれません。おいしい弁当も生まれません。仕事として、なんかつまらない気がします。

 やっぱり職場には活気があって、商品が売れた時はみんなで大喜びしたり、売れない時はがっかりしたり、それが仕事の面白さです。ぷかぷかに笑顔が多いのは、そういった面白さが職場にあるからだと思います。そういった中でみんな人として成長していきます。

 そういった可能性を「うちは福祉ですから、競争はしません」と最初から閉じてしまうのは、利用者さんに悪いじゃん、なんて思ってしまうのです。

   

 

 

こんなお弁当が届けられると、なんだかそれだけで幸せな気持ち

 みっちゃんが色塗りしているのは配食サービスのメニューの絵

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 週一回一人暮らしのお年寄りにお弁当を届けているグループがあって、お年寄りの方たちにはこのメニューに書かれたぷかぷかさんの絵をとても楽しみにしているそうです。

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今までこんな絵がありました。

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 お弁当にはぷかぷかさんの描いた楽しい絵が帯として巻き付けられています。

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お弁当に巻き付けるとこんな感じになります。

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週一回、こんなお弁当が届けられると、なんだかそれだけで幸せな気持ちになります。

ぷかぷかさんたちは、こんな風にして幸せを届け、地域社会を耕しています。

遅ればせながら「引っ越しのご挨拶」をご近所に

 友達大作戦の打ち合わせがありました。

 介護をやっている方から素晴らしい提案がありました。遅ればせながら「引っ越しのご挨拶」をご近所にやりましょう、という提案です。かずやさんの家には毎日介護の方が日替わりで入っています。

 「日替わりで得体の知れない男どもが出入りしている様子を不安に感じているかも知れません」

 とあって、なるほどなと思いました。大声とそういった様子が重なると、近所の方の目にはどんな風に写るんだろうと思いました。

 なので、遅ればせながらですが、かずやしんぶん、かずやクッキーなどを持って、ご近所にあいさつに行きましょう、という提案です。かずやさんもいっしょに行くことになるので、かずやさんに「いっしょに行きますか?」と聞きました。

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 かずやさんの返事は

「やめとく〜」

でした。

 「じゃあ、和尚さんだけで行ってもいい?」(丸刈りの人は、かずやさんにとってはみんな和尚さんだそうです)と聞くと、それはいい、という返事でした。

 介護に入っている方はなかなかゆとりがないので、ここは応援団の方で時間のゆとりがある方がいれば、お手伝いに行けるといいですね。

 

 近所のお店で「かずやしんぶん」を置いてくれるところを探す、という提案もありました。「かずやしんぶん」の内容を説明し、お店においてもいいよ、っていってくれるお店を探すのです。そうやって「かずやしんぶん」が地域の人の手で広がっていくと、地域が少しずつ変わっていく気がします。

 

 お米はスーパーで買うのではなく、お向かいの米屋で買うようにしましょう、という提案もありました。お米は定期的に買います。定期的に顔を合わせます。量は少なくても、お店のお得意さんになれば、当然お店の人は顔と名前を覚えてくれます。お米買いながらいろんな話をしましょう。こんな風に買い物を通しておつきあいが自然に広がっていくっていいですね。

 地域で生活する、というのは、こうやって生活を通して関係が広がっていくことだと思います。その関係の広がりこそが重度障害者の自立生活の一番大事なところだと思います。この関係の広がりが、かずやさんを、そして地域の人たちを豊かにしていきます。

 

 

堅くドアを閉じてしまった人の心を想像すること

  先日、介護者の方が二階の部屋へあいつに行きました。かずやさんは行きたがらないので部屋で待機。ドアをノックしても、全く反応がなかったそうです。「下の部屋の尾野です」と言っても、ドアは閉まったまま。何度かトライしたものの、反応がないので、手紙、かずやしんぶん、かずやさんの作ったコーヒーカップ、かずやクッキー、植木鉢をドアの前に置いてきたそうです。

 ある程度は予想されたこととは言え、実際に閉じたドアを見てしまうと(固く閉じたドアは、そこにいる人の心そのもの)、やっぱり心が萎えてしまいます。閉じてしまった心を開いてもらうにはどうしたらいいんだろう。

 でも、ここからが本当の勝負だと思います。本気で閉じたドアと向きあう。どうしたら心を開いてもらえるのか、考えて考えて考え抜くしかないのだと思います。

 堅くドアを閉じてしまった人の心を想像すること。そこからしか再出発できません。

 

 

 

 ズームのオンラインで参加した学生さんが「共感マップ」というツールを提案してくれました。ユニバーサルデザインを勉強している方ですが、相手を理解するうえでとてもいいツールだと思いました。

 お二階さんがどんな思いでいるかを俯瞰できるようにマップ化することで解決の糸口が見つかるかも知れません。共感マップの要素は次の6つです。

 

1,お二階さんが見ているもの→

  →かずやさんの家の看板、ドアに貼りだしたかずやさんの絵

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2,お二階さんが聞いていること→

  →かずやさんの大声

 

3,お二階さんが考えていること、感じていること→

  →うるさいな、と思っている。フラストレーションがたまっている。

 

4,お二階さんが言っていること→

  →多分「かずやさんの大声がうるさい」

 

5,お二階さんの痛みやストレス→

  →夜、休みたい時間に大声が聞こえると、それは辛いこと。ストレスがたまる。

  現時点では大声を出す人がどんな人かわからないので、やっぱり怖い。 

 

6,お二階さんが得られるもの、欲しいもの→

  →大声の聞こえない静かな夜

 

 かずやさんの家の看板、ドアに貼りだしたかずやさんの絵を、お二階さんが見たらかずやさんに対し、どういうイメージを持つんだろうと想像してみましょう。大声に対してうるさいなぁ、と思っている印象はどう変わるでしょう。そこを想像してみる。こういった想像こそが問題解決に向けての具体的な手がかりを見つける気がするのです。何もないままどうしたらいいのかを漠然と考えるより、はるかに問題の解決方法が見えてきます。

 6の「大声の聞こえない静かな夜」を目標にするのは、かずやさんの大声が止められない以上、無理な目標です。でも、大声が聞こえた時、

「ったくうるせーなー」

と思いながらも、

「ま、しょうがねーか」

というあたりに落ち着くのは、多分可能です。こうなれば、大声を出すかずやさんとも、同じアパートでなんとか暮らすことができます。

 その着地点を目指すためにはこれからどうしたらいいのか、ということです。実際に動くのは現場の人たちですが、私たちも色々アイデアを提供したいと思うのです。

 

 

 この問題をテーマに大学での授業、もしくは自主セミナーが開けるといいなと思っています。

 大声に対して苦情が出た問題をどうやったら解決できるのか、それを考える授業、セミナーです。重度障害者の自立生活が生み出す地域社会との摩擦の解決方法を考えることは、重度障害者とどんな風にすればお互い気持ちよくいっしょに地域で暮らしていけるかを考えることです。社会を構成する自分自身の生き方にもふれてくる問題です。

 共生社会を作ろう、とかともに生きる社会を作ろう、という抽象的な話ではなく、かずやさんというおじさんとどうやったらお互い気持ちよくやっていけるのかを考えます。そのため、授業、セミナーにはかずやさんもいっしょに行き、かずやさんのことをまず知ってもらいます。かずやさんはお話ができないので、介護の方からいろいろ聞くことになりますが、それでも実際にかずやさんに会うことはすごく意味のあることだと思います。かずやさんはこんな人です。

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 可能なら大声も出してもらいましょう。その大声を聞いて、もし自分が二階に住んでいて、ときどき下の部屋から大声が聞こえたらどんな気持ちになるだろう、と想像します。あるいは介護者としてかずやさんのそばにいる時、大声を出し始めたらどんな気持ちになるか想像してみます。若い介護者の一人は、また二階に響いているのではないかと、もう泣きたいくらいの気持ちだったと話してました。

 で、その大声に対し、二階の方から苦情が来ました。どうしたらこの問題が解決できるか、が授業、セミナーのテーマです。大声を聞くことで、問題の深刻さをリアルに考えることができます。

 いいアイデアが出てくれば、実際にやってみます。もしそのことでいい方向に動いていけば、

「あっ、社会って、こうやって変えていけるんだ」

っていう成功体験になります。若い人たちが社会に希望を持つことができます。

 

 

 

6月22日(火)、友達大作戦の打ち合わせをします。固く閉じてしまったドアを開けてもらうにはどうしたらいいかを考えます。大学の授業、セミナーの企画の話もします。

 zoomのオンライン参加もOKです。ぜひいろんなご意見お願いします。

2021年 6月 22日 (火) 午前10:30~ 午後12:00 

参加希望者はぷかぷか問い合わせ窓口から申し込んで下さい。URLとミィーティングID、パスコードをお送りします。

www.pukapuka.or.jp