ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

ぷかぷか日記は以下に移転しました。
ぷかぷか日記 – NPO法人ぷかぷか

NHKスペシャルで見えてきたこと

 先日放送された相模原障害者殺傷事件をテーマにしたNHKスペシャルで、やまゆり園の現場が重い障がいのある人にどのように対応していたかがよくわかる映像がありました。

 徘徊がひどく、見守りが困難だとして毎日のように「身体拘束」される女性の話がありました。多い日は12時間を超えることもあったそうです。その結果、女性はだんだん意志を示さなくなったといいます。

 私は映像を見るだけで辛くなりましたが、現場のスタッフで、こういうやり方はおかしい、こんなことはやめよう、と思う人はいなかったのでしょうか。

 12時間を超える「身体拘束」は、どう考えても異常事態であり、明らかに人権侵害です。誰が見ても、これは「支援」ではなく、「虐待」です。

 結局のところ、こういうことに心を痛める人がいないような支援の現場だったのではないかと思います。

 事件は犯人の特異性によるものとされていますが、現場のこういう雰囲気こそ、犯人の障がいのある人を見る目を養ったのではないかと思います。

 『そよ風のように町に出よう』終刊号で相模原障害者殺傷事件についての対談がありました。

 

「…ボクも植松くんに精神障害っていうレッテルを貼って解決する問題ではないと思っています。ではどうして彼のような人間が生まれたのか。植松くんは施設に勤めている時は非常に腰が低いというか「これから勉強します」っていう、仕事に対して前向きな、いい青年らしい発言をしているわけですよね(正式採用後、「津久井やまゆり園」家族会の機関誌「希望」に記載された彼の挨拶文)。そういう青年が3年間施設にいて、最後の数ヶ月でああいう精神状況に変貌したと思いますけれども、どうしてこういうふうになっちゃうのかなと、そこをボクは一番考えたいなと思ってます。」

  「前の家族会の会長もいってましたけど(就労支援施設「シャロームの家」主催の集会(2017年2月27日)での尾野剛志さんの講演)、日頃ごろごろ寝転んでテレビばっかり見てたり、そんな職員が目立ってた。そこに突然彼が行ったらびっくりして飛び上がるって…」

 

 そんな話と、NHKスペシャルの映像が重なってしまうのです。 

 去年のちょうど今頃書いたブログ

 

 7月26日のやまゆり園事件追悼集会で出会った家族会の方も、NHKクローズアップ現代で取り上げられた植松被告の手紙にあった「障がい者が不幸の元」という考え方に確信を持ったのはやまゆり園で勤務した3年間だった、と書いていることについて

 「彼は最初はそれなりの思いを持ってやまゆり園にきたのだと思います。でも、現場がひどすぎた。だからそんなふうに思ってしまったんだと思いますよ」

 

 相手を殺すところまで行ってしまったのは、やはり犯人の特異性が大きな部分を占めるのだろうと思います。でも、事件の動機となる障がいのある人を見る目線は、やはり現場の雰囲気で養われたのではないかと思います。やまゆり園で勤務する前は、障がいのある人にほとんど関わってないのですから。

 彼が働いた現場が障がいのある人たちとどのように関わっていたのかの検証はとても大事だと思うのですが、、神奈川県の検証委員会では全くやっていません。どうしてこの一番大事な、核心部分ともいえるところを検証しなかったのか。福祉施設の安全管理体制が問題だった、と書くことで、何かすごく大事な問題をすり替えている気がします。

 たまたまNHKスペシャルで明らかになった「重い障がいを持った人を12時間も身体拘束をする」といった異常な事態が支援の現場でどうして起こったのか、保護者の方が言っていた「現場がひどすぎた」とは具体的にどういう事態だったのか、「障がい者が不幸の元」という考え方に確信を持ったのはやまゆり園で勤務した3年間だった、という犯人の言葉の検証等々、津久井やまゆり園という支援の現場が障がいのある人たちとどのような関わりを持っていたのか、という問題です。

 どうしてそこにこだわるのか。

 今まで何度も書いていますが、犯人が下の写真のような

「いい一日を一緒に創り出すような関係」

を障がいのある人たちと作っていたら、事件は起きなかった、と思うからです。19名の命は奪われることはなかったと思うのです。だとすれば、事件の責任はどこにあるのか、犯人一人の責任にすればすむ話なのかどうか、です。

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★NHKスペシャルを見られた方、ぜひ感想をお寄せ下さい。pukapuka@ked.biglobe.ne.jp

 

★8月4日(土)のぷかぷか上映会にはNHKスペシャルの制作に関わった方が何人か参加します。ここしか聞けない、いろいろおもしろい話が飛び出すかも知れません。これはもう来なきゃソン!ですよ、絶対に。

pukapuka-pan.hatenablog.com