ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

ぷかぷか日記は以下に移転しました。
ぷかぷか日記 – NPO法人ぷかぷか

彼らに惚れ込んだこと、それがすべての始まり

 サービスグラント(日本のプロボノ活動の老舗)との打ち合わせがありました。先日おこなったテストマーケティングの結果についての話し合いです。ぷかぷかのアートを企業に売り込む営業資料をプロボノ活動で作っていただいています。その営業資料を持って、実際に企業にテストマーケティングに行ったのです。

 たまたまNHK Eテレの「明日も晴れ!人生レシピ」の番組を作っている映像制作会社のプロデューサーの方が様子を見に来られていました。「キャリアを生かして人助け」という番組を作るそうで、人生100年時代、中高年になって以降、「何か社会参加できないか」とは思うものの、それまでそういった経験がなければ、いきなりはむつかしい。そんな中で「プロボノ」(スキルを生かした社会貢献活動)という取り組みを紹介したいと考えて、様子を見に来たようでした。

 会社を定年になり、名刺を使わない世界に飛び込んだ途端、自分の支えを失った気分で、何していいのかわからない人が多いそうです。会社あっての自分で、その会社を外れた途端、何やっていいかわからない、自分自身がどう生きたいかがわからない、というわけです。会社のために働く人生はあっても、自分自身のための人生はなかったのでしょうか。ひたすら会社のために働いているうちに、自分の人生を忘れてしまったのでしょうか。淋しい話です。

 私自身は幸いにも定年後やりたいことがしっかりありました。養護学校の教員をやっているとき、障がいのある人たちに惚れ込んでしまい、こんなすてきな人たちとはいっしょに生きていかなきゃソン!と思っていたので、定年退職を機に、彼らと一緒に働く場「ぷかぷか」を立ち上げました。

 事業を立ち上げるには莫大なお金がかかります。そのために退職金を全部使ってしまいました。家族に障がいのある人がいたわけでもありません。なんの関係もない人たちのために、大切な退職金を使ってしまったのです。家族に障がいのある人がいてもこんなことはできない、と障がいのある子どもを抱えたお父さんは驚いていました。でも、なんの迷いもありませんでした。それくらいの思いで「ぷかぷか」を立ち上げたのです。時間も、お金も、自分の持っているものすべてを注ぎ込みました。

 経営の経験がなかったので、始めた1,2年は本当に苦しい日々が続きました。恐ろしいほどの勢いでお金が出ていき、ひょっとしたらもう持たないんじゃないかと、何度も思いました。

 そんな中でもやってこれたのは、障がいのある人たちがいつもそばにいてくれたことです。彼らといるとほんとうに楽しい毎日でした。元気をもらいました。心がほっこりあたたかくなりました。彼らほど心強い味方はいませんでした。

 障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ、というメッセージに共感したり、ぷかぷかさんたちといい出会いをしてぷかぷかのファンになった人たちがたくさん現れました。経営は苦しかったけれど、やり始めたことは間違ってなかったと思いました。彼らといっしょに生きていった方が、社会が豊かになる、というメッセージとその実践は、たくさんの共感を呼びました。

 ホームページのアクセス数は5年で25万を超えました。先日は九州から上映会と講演会を依頼されました。

 彼らを「支援」するのではなく、「いっしょに生きていく」というフェアに向き合う関係からは、たくさんの物語が生まれました。障がいのある人たちは社会のお荷物だとか、効率が落ちるといったマイナス評価が圧倒的に多い中で、「ぷかぷか」は、彼らは社会を耕し、社会を豊かにする存在なんだという物語を生みました。社会を変える新しい価値の創造といってもいいと思います。

 最初につぎ込んだ退職金は、この新しい価値創造のための投資であったと今は思っています。あの時退職金を銀行にあずけていれば、社会を豊かにするこんなにすばらしい価値は生まれませんでした。今、退職金と同じ額を出して、その価値が買えるかというと、決して買えません。ぷかぷかが7年かけてこつこつと創り出した新しい価値なのです。退職金の何倍もの価値を「ぷかぷか」は生み出したと思っています。

 

 養護学校を退職して7年。教員をやっている頃よりはるかに楽しい毎日です。こんなに楽しい日々が来るとは思ってもみませんでした。

 すべて、障がいのある人たちのおかげです。彼らを「支援」するどころか、彼らがいなければ「ぷかぷか」はできなかったのです。彼らはすばらしい社会貢献をしているのです。

 

 人生の大きなターニングポイントは、私の場合、障がいのある人たちに惚れ込んだことです。それがすべての始まりでした。彼らのおかげでこんなにも楽しい人生を送ることができ、彼らに感謝!感謝!です。