ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

管理しない接客だからこそ、思いもよらない出会いが…

  本の原稿を書きました。

 

 カフェを始めるとき、接客の仕方がわからないので、講師を招いて接客の講習会をやりました。2時間くらいの講習でしたが、確かにいわれたとおりにやれば、それなりに上手な接客ができます。でも、なんかおもしろくない気がしました。要するにマニュアル通りやりなさいという話で、マニュアル通りやる、というのは、個性を出してはだめ、ということです。彼らの個性、持ち味が出せないのであれば、彼らが接客する意味がなくなるので、講習会は一回でやめました。(このときの判断が、今から思えばすごくよかったと思います。マニュアル通りにする管理された接客をしない、ということが、今のぷかぷかの雰囲気を作り出していると思うからです。)

 彼らの持ち味を生かす、ということは、こちらがとやかく言わずに、彼らに任す、ということです。言い換えれば「管理しない」と言うことです。

 管理しないので、普通に考えればあり得ないような接客もあります。でもそれ故に思いもよらない出会いをした方がいました。

 

 ウィルスに感染したと表現するお客さんの話です。

 

 子供2人を連れてカフェでランチを食べていました。お客さんは私の家族と他にもう一組だったかと思います。

お天気も良く明るくゆったりとした空気の中で

「おいしいねー」

「もう1回チョコパンとチーズのパンおかわりしたい」

などと子供と話をしていました。

 そしたら厨房の小窓のカーテンが急にシャッ!と開き、ニコニコ笑顔にマスクの方が

「おいしいかい!?」

と聞いてきました。

 一瞬何が起こったのかわかりませんでしたが、とっさに

「美味しいです!」

と負けじと大きな声で答えました。

 その方は、そうだろうと言わんばかりにニコニコのまま

「フフ〜ン」

と笑い、カーテンを閉めました。

  多分10秒程のできごとでしたが、この思ってもみない楽しいやりとりで、また食べに来ようと思いました。

 ぷかぷかウィルスに感染したのは、多分この時だと思います。

 

 これがきっかけでその方はぷかぷかパン教室に来るようになり、

いろいろお話をし、今はスタッフのひとりとして毎日彼らと一緒に楽しく働いています。

 「ウィルス」という言い方がいいですね。そうとしかいいようのないものが

「ぷかぷか」にはあるんだと思います。

 「ぷかぷかのファンです」とおっしゃるお客さんが最近増えていますが、

こういう方も多分ウィルスに感染したのではないかと思います。

 

 にしても、「おいしいかい!?」のひとことで、お客さんの心をわしづかみにしてしまうなんて、超人的接客だと思いました。

 

「おいしいかい!?」

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 「おいしいかい!?」なんて言う言葉も、管理していない環境だからこそ、ぽろっと出てきたのだと思います。普通はお客さんに向かってこんな言葉は使いません。

 でも、そのとき、厨房にいたマツイさんはお客さんがあんまりおいしそうに食べてるので、なんだかうれしくなって、ついカーテンをシャッとあけ、ニカーッと笑いながら

「おいしいかい!?」

なんて言ったんだろうと思います。聞いたお客さんも、

「え?!」

とか思いながらも、マツイさんの投げかけた言葉の、なんとも言えないおかしさ、あたたかさに、クスッとしながら、負けずに大きな声で

「おいしいです!」

って、応えたんだろうと思います。マツイさんは、そうだろうといわんばかりに

「フフ〜ン」

と笑い、カーテンを閉めたようです。

 その余韻の中で、お客さんは

「また来よう」

って思ったというのですから、おもしろいですね。この一瞬のやりとりで、ぷかぷかのウィルスに感染してしまったとお客さんは言ってました。

 

 こういう思ってもみない、全く想定外の、楽しい、あたたかな出会いは、管理された空間からは絶対に生まれません。

 もちろんこの一瞬のやりとりがいつもうまくいくとは限りません。事実カフェのお客さんで利用者さんの言葉に不愉快な思いをしてクレームをつけた方もいます(「よく食べますねぇ」と正直に感想を言っただけなのですが、お客さんにとっては気に触る言葉だったようです)。でも、だからやはり管理が必要だ、というのではなく、そういったリスクを抱え込みながらも,なお、彼らの持ち味を生かすお店、彼らの持ち味にふれ、お客さんの心がキュ〜ンとあたたまるようなお店にしたいと思うのです。

 

 

 カフェのお客さんで「彼らの接客にふれると心が癒やされます」とおっしゃる方が最近えているのですが、私にとっては思いもよらない評価の言葉でした。彼らの個性をそのまま出したそれほどうまくもない接客がお客さんの心を癒やしている、ということ。これは彼らの立ち居振る舞いがそのままお客さんの心を癒やしている、ということになります。

 それはどうしてなんだろう、ということを私たちはきちんと考えておきたいと思うのです。障がいのある人たちは「なんとなくいやだ」「怖い」「何をするかわからない」といった形で、社会から締め出されていることが多いなかで、どうしてぷかぷかだと心を癒やしてくれる存在になるのか、ということです。そのことをきちんと考えていくことは、お互いがもっと生きやすい地域社会がどうやったら実現できるかにつながっていくと思います。

 

 カフェだけでなく、パン屋、外販、お惣菜屋、すべて接客は利用者さんにお任せしています。マニュアルがないので、みんな自由にのびのびと接客をしています。その雰囲気がお客さんの心を癒やしているようです。

 区役所の外販でぷかぷかが一番お客さんを集めているのも、みんな楽しそうに仕事やっているからだと思います、と区役所の方がおっしゃっていました。楽しく仕事をする、ということが仕事をする側にとってはもちろん、お客さんにとっても、とても大事なことがよくわかります。

 

 きちんとマニュアルに沿って正しい接客をさせている(しっかり管理している)福祉事業所のパン屋、カフェに行ったお客さんが

 「ぷかぷかに来るとなんだかホッとするわ」

とおっしゃったことがありましたが、管理されたお店は、お客さんにとっても息苦しいのだと思います。

「なんだかホッとする」

という言葉こそ大事にしたいと思うのです。そういう空間を彼らは自然に作り出してくれます。そのことをどこまで信頼し抜くか、だと思います。

 そして、この「なんだかホッとする」という感覚こそが、ぷかぷかが地域の人たちにとって大切な場になっている理由だと思います。