ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

ぷかぷか日記は以下に移転しました。
ぷかぷか日記 – NPO法人ぷかぷか

こころさむい時代だからなあ

 5月21日(木) 映画「ぷかぷか」の上映をみどりアートパークホールで行います。ぜひ見に来てください。

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 この映画はぷかぷかで働いている障がいのある人たちと地域の人たちが6ヶ月に渡ってワークショップをやった記録です。

 ワークショップというのは、いろんな人が集まっていっしょに作業をやり、その中で新しい何かを発見したり、今までにない新しいものを創り出したりするものです。

 

 昔、2時間くらいのワークショップをやって欲しいという依頼がよくありました。よくやったのが詩の朗読をするワークショップでした。みんなで詩を読むだけですから、道具も材料もいらないすごーく楽なワークショップです。よく使ったのは長田弘さんの詩集『食卓一期一会』に載っている「ふろふきの食べ方」という詩です。


   自分の手で、自分の / 一日をつかむ。

   新鮮な一日ををつかむんだ。 / スがはいっていない一日だ。
   手にもってゆったりと重い / いい大根のような一日がいい。

   それから、確かな包丁で / 一日をざっくりと厚く切るんだ。
   日の皮はくるりと剥いて、/ 面取りをして、そして一日の
   見えない部分に隠し刃をする。/ 火通りをよくしてやるんだ。

   そうして、深い鍋に放りこむ。/ 底に夢を敷いておいて
   冷たい水をかぶるくらい差して、/ 弱火でコトコト煮込んでゆく。
   自分の一日をやわらかに / 静かに熱く煮込んでゆくんだ。

   こころさむい時代だからなあ。/ 自分の手で、自分の
   一日をふろふきにして / 熱く香ばしくして食べたいんだ。
   熱い器でゆず味噌で / ふうふういって。

 

 私の大好きな詩です。これをみんなで読もう、というワークショップです。

 この詩は一人で読んでもおもしろい詩です。一人で読む時はたいてい黙ったまま読みます。でも、これを何人か人が集まって、みんなで声を出して読むと、もっとおもしろい読み方ができます。

 詩の朗読ワークショップでどんなことをやったか具体的に書いてみます。

 まず読み手と聞き手のふたグループに分かれます。読み手になった人たちは一人一行ずつ順番に声を出して読んでいきます。なんとなく声を出すのではなく、はっきりと聞き手に向かって声を出します。誰かに向かって声を出すことで、声の感じ、言葉の感じが変わることが自分でもわかります。

 「自分の手で、自分の / 一日をつかむ。」

 これを人に向かって読みます。どんな思いで読みますか?人に向かって読む、という緊張感の中で、この一行の言葉の意味が、ぐっと深まります。聞く側も同じです。読み手の思いのこもった言葉を受け止めます。

 「手にもってゆったりと重い / いい大根のような一日がいい。」

 いい大根を思い浮かべるといい顔になります。そのいい顔でこの一行を読みます。一人で、黙って読む時よりも、はるかに気持ちよくこの一行が読めます。聞く側も同じです。双方がとてもいい気持ちになれる一行です。

 「こころさむい時代だからなあ。」

 何を思ってこの一行を読みますか?ここは読み手の思いがいちばんよく見えるところ。聞く側も一番言葉がしみるところです。

  読み方を変えてみます。椅子に座って読んだり、読んでる途中で椅子から立ち上がったり、あるいは歩きながら読んだり。読む姿勢、あるいは動きが加わることで、言葉の響き、力が全く違ってきます。

 音楽もかけます。よく使ったのはエリックサティの「ジムノベティ」でした。ぐっと雰囲気が出ます。いい音楽に支えられ、詩の言葉が更に光ります。そういったことを読み手も聞き手も体感できるところがワークショップのいいところだと思います。

 

 詩をみんなで読むというワークショップ、ざっと駆け足で説明しましたが、いかがでしたか?一人で黙って読む時とは全く違う発見がたくさんあったと思います。何よりの収穫は、このワークショップを通して、知らない人同士が出会えたことです。新しい自分、新しい世界と出会えたことです。そしていろんな人がいたおかげで、ここでしかできないすばらしい「朗読会」ができたことです。

 

 映画「ぷかぷか」に記録されたワークショップでも、たくさんの出会いがあり、その出会いの中で、すばらしい作品ができあがりました。それをぜひ見て欲しいと思っています。

 見ることは、あなたと「ぷかぷか」の新しい出会いですね。どんな出会いになるか、わくわくしますね。

 そうそう、忘れてました。上映会の日、ホールのロビーで、ぷかぷかのパン、お弁当を販売します。持って行く数が限られていますので、絶対に欲しい!と思われる方は事前にメールで注文してください。

 メールアドレスは pukapuka@ked.biglobe.ne.jp