ぷかぷか日記

ぷかぷか理事長タカサキによる元気日記

仕事で毎日が充実すると…

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1,はじめに
 「カフェベーカリーぷかぷか」では、お互い「いい一日を過ごそう」ということを目標に仕事をしている。「いい一日を過ごす」とはいうまでもなく、仕事を楽しみ、充実した一日を過ごすということだ。そのことを大事にすると、利用者さんの介護の度合いが格段に減る、という思いもよらない結果を生んだ。福祉事業所における仕事について考えてみたい。

2
,事例の紹介
 Yさんは「ぷかぷか」に来る前、ある作業所で働いていた。働いていたと言っても自分の好きなことをやって一日のんびり過ごすような感じだった。二十歳半ばになってどこか物足りなさを感じたのかどうか、仕事をしっかりする「ぷかぷか」にやってきた。クッキーやラスクを作る仕事をやったのだが、仕事のペースが作業所時代とは全く違い、慣れるまでは本当に大変だったと思う。それでも自分の作ったものが商品として売れ、それが収入となって自分に返ってくる、といったことが見えてくると、仕事がだんだんおもしろくなって、毎日生き生きと働いていた。仕事がおもしろくなると、更に仕事ができるようになり、いつの間にかクッキー、ラスクの生産を任せられるくらい仕事を覚えていた。

 Yさんは「ぷかぷか」に来て初めて「仕事」というものに出会った、といっていいのではないかと思う。それまでいた作業所では、一応「仕事」とは言っても、自分の好きなことを、特に時間に追われることもなくやるだけなので、「ぷかぷか」の「仕事」とは質的に全く違うものだ。その違いが何を生み出すか、2年ほどたってからはっきりする。

 2年ほどたった頃、担当のケースワーカーが介護認定の調査にやってきた。作業所にいた頃は何するにしても介護が必要で(Yさんには発作がある。通勤の時はそのためいつもヘルパーがついている)、ほとんどの項目がスコア表の右の方に○がついていた。それが今回ほとんどの項目が介護の必要のない左端に○がつき、こんなに評価がいいと介護サービスが受けられないとケースワーカーが心配するほどの結果だった。

 Yさんはケースワーカーさんに今の気持ちを聞かれ、「作業所にいるときはいつもうつむいて生きている感じでしたが、今はまっすぐ前を向いて生きています。」と応えていた。
 「まっすぐ前を向いて生きています」なんて、そうそう口にできる言葉ではないが、その言葉がさらっと出てくるくらい、毎日が充実しているのだと思う。

 介護が必要かどうかは、その人の能力によって決まってしまうものではなく、その人自身の生き方によって大きく変わるものであるということをYさんの事例は教えてくれている。人は「まっすぐ前を向いて生き始めるとき」、そう生きようと、体全体が変わってくるのかも知れない。心がはずんでくると、体全体が元気になる。その結果、介護の度合いが減ってきたということだろう。

 「ぷかぷか」では「いい一日を過ごす」ために、利用者さんがおもしろいと思える仕事を提供することを心がけている。その結果、Yさんのような事例を生み出した。

3
,考察
 毎日が充実すると、介護の度合いまで変わってくるという事実はたくさんのことを教えてくれる。介護の度合いが下がったと言うことは、自立の度合いが上がったと言うことで、人生を生きていく上でものすごく大きな意味を持っていると思う。そのことが何か訓練をした結果ではなく、仕事のおもしろさに出会い、そのことで充実した毎日を送ることができた結果であった、というところに「仕事」というものの持つ新しい可能性があるように思う。

 仕事は単にお金を儲けるだけでなく、その人の人生そのものでもある、ということを今回の事例は教えてくれる。福祉事業所がそういったことまで視野に入れ、利用者さんに仕事を提供することができれば、利用者さんの毎日はもっともっと充実するのではないかと思う。

4,おわりに
  「ぷかぷか」は就労支援の事業所だが、就労に向けた訓練としての仕事が、利用者さんの毎日をこれほどまで充実したものにしていたこと。このことは福祉事業所で何を大事にすべきなのかを具体的な形で教えてくれたと思う。

 Yさんがもし作業所で仕事を続けていれば、Yさんの人生は全く違ったものになっていただろう。福祉事業所で提供する仕事は、利用者さんにとって、それくらい大きな意味を持っている。

 人は「うつむいて生きる」より、「まっすぐ前を向いて生きる」方がいいに決まっている。利用者さんもスタッフも「まっすぐ前を向いて生きる」ような仕事をこれからも創り出したいと思う。